山野誠

専門
地球熱学，テクトニクス

研究内容
　日本列島を始めとする各地の沈み込み帯について、地下温度構造と熱輸送過程に関する研究を行っている。
　岩石の物理的・化学的な性質は温度によって大きく変化する。このため、沈み込み帯における諸過程（地震活動、地殻の変形・流動、火成活動、変成作用等）は温度構造と密接に関係している。例えばプレート境界で発生する巨大地震の震源域の広がりも、温度に強く支配されていると考えられる。
　現在の主な研究対象は、南海トラフ（西南日本）及び日本海溝（東北日本）沈み込み帯で、海域を中心とした熱流量測定と、それに基づいた地下温度構造の推定を行っている。南海トラフ海域では、熱流量分布が四国沖と紀伊半島沖で大きく異なることが判明し、その原因や巨大地震発生帯の温度構造に対する影響について研究している。一方、日本海溝海域では、海溝海側において異常に高い熱流量が観測されることが明らかになった。高熱流量の原因としては、沈み込みに伴うプレートの変形やプレート内火成活動の影響が考えられる。この異常について詳しく調べるため、高密度の熱流量測定と海底電磁気探査を行い、沈み込む太平洋プレート上層部の温度構造・電気伝導度構造を求める研究を進めている。
　海底水温の変動が激しい浅海域では、表層堆積物中の温度が乱されるため熱流量を測定することが困難である。この問題を解決するため、堆積物中の温度分布を長期計測し、データを解析して水温変動の影響を取り除く、という新しい手法を開発し、実際に熱流量を求めることに成功した。さらに効率的に測定を行うことを目指し、計測装置と解析手法の改良を進めている。
　この他、陸上の掘削孔を利用した観測・研究も行っている。一つは活断層の温度構造の研究であり、掘削孔内の温度分布の長期観測により、断層運動に伴う熱の発生や流体の移動について調べている。また、孔内温度分布を解析して地表面温度変動を復元するという手法を用いて、過去の温度環境の変遷を調べる研究を、国内や東アジア地域において進めている。