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はじめに

深尾良夫(東京大学地震研究所)
海半球ネットワーク計画も4年が経過し、いよいよ最終年度を迎えました。そこで海半球計画がこれまでどこまで進んだかを、簡単に 表1のようにまとめました。 特に計画の柱であるOHPネットワーク(海半球ネットワーク)については、その建設がどこまで進んだかを 図に示しました。 この図を見ると、建設が当初の予定通り順調に進んでいることがわかります。 特に平成11年度には待望の海底地震観測点・海底電磁気観測点が設置され、海底と海洋島とのリンクというOHPネットワークのセールスポイントがようやく実現しつつあります。 またODP海底掘削孔利用の地震観測点は、広帯域地震計とSacks式歪計を埋め込んだユニークなシステムを備えています。 もっともOHPネットワークは、海底と海洋島とをリンクした海洋域の観測網であるということばかりでなく、地震・電磁気・測地の総合地球物理観測網であることも大きな特色となっています。 今後、この2つの特色を生かした研究が数多く生まれて来ることを期待しています。 また現在、マリアナ海溝と琉球海溝とを横切るフィリピン海横断測線に沿って準広帯域海底地震計15台と海底磁力電位差計6台を長期に展開し、更にその延長線上の中国大陸で中国と共同で広帯域地震観測とMT電磁気観測を続けています。
 以上、陸上観測網はデータセンターも含めて平成12年度末には完成の見込みで、 表1に概略を示したように既に大きな成果が得られつつあります。 また、フィリピン海横断機動観測についてもデータ解析班が組織され、データ回収をてぐすねひいて待っています。 一方、海底掘削孔利用の広帯域地震観測点3点については、ようやく第1号観測点が稼働し始めましたが、その建設は、Ocean Drilling Project (ODP) にのっとって行われるため、最後の観測点の建設は平成13年4月となり、更に地震計が稼働し始めるのは同年7月になる予定です。 従って、海洋島と深海底とをリンクした世界初の地球物理観測網の完成は平成13年度となり、深海底からのデータ回収は更に1年後、即ち陸と海からのデータが揃うのは平成14年度となる見込みです。 残念なことに科研費のサポートによる本計画は、平成14年度を待たずに12年度で終了となります。このことを惜しんで固体地球物理学界の各組織から、その存続を願う強い希望が寄せられています (表1の(B)(3)の資料参照)。 これら支援の手紙は等しくOHPネットワークが海洋島と深海底とをリンクした世界初の地球物理観測網であることを指摘し、各国の似たような努力に対する先導的役割を期待しています。 こうした期待に応えるためにも、「OHPネットワーク」の名で既に世界的ブランドになっている海半球ネットワークを完成させることが私共の使命であろうと考えます。
 もちろん海半球ネットワークは20年程度の長期にわたるデータの取得によって初めてその意義を発揮するものであり、大学がそうした長期の維持を担うことが適切とは考えません。 しかし、現在は文部省と科学技術庁との統合の過渡期でもあり、こうしたネットワークの長期維持の見通しを立てることが困難です。 このため今は何とか新プロの延長などによりネットワークの建設を完成させ、その期間中に長期維持の具体的方策を確立することを考えています。この点、皆様の一層の御支援をお願いする次第です。