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海半球ネットワークデータセンター地球電磁場データ公開

清水久芳(東京大学地震研究所)
 海半球ネットワーク計画により行われている海洋島および海洋周辺域での観測により得られた地球磁場データが、平成12 年4月に公開された。地震等のデータと同じく、海半球データセンターホームページ
   http://ohpdmc.eri.u-tokyo.ac.jp/
より取得できる。
 現在、海半球ネットワーク計画では、図1に示された観測点において、地球磁場連続観測を行っている。
図1 海半球ネットワーク磁場観測点(平成12 年4月現在)
観測には、フラックスゲート磁力計とプロトン磁力計が用いられており、それぞれ、ベクトル3成分(Hx, Hy, Hz)1秒値と全磁力(F)1分値を測定している。 また、フラックスゲートセンサーと周辺回路には温度依存性があるため、温度補正のために、センサーの温度(T)1秒値も記録している。 (温度補正については Shimizu and Utada (1999)を参照。)各観測点で得られたデータは、ZIP disk もしくはインターネットによって海半球データセンターに集められ、処理されている。
 公開されている観測値は、すべての成分(Hx, Hy, Hz, F, T)の1分値で、各観測点・月ごとに1つのファイルにまとめられている。フラックスゲート磁力計と温度計のデータに関しては、1秒値をフィルター処理して求めた1分値が公開されている。 また、データの概要・欠測の有無等のチェックをホームページ上で可能にするため、 各観測点での全成分1年分のプロット(QuickLook、図2)が準備されているので参照していただきたい。
図2 QuickLookの例(1999年ポナペ)
なお、(Hx, Hy, Hz)および温度の1秒値は、リクエストに応じて、CD により配付する。
 フラックスゲート磁力計は、通常の観測と同様に、各観測点における局所地磁気座標系に沿うように(Hy成分を小さくするように)設置されている。 この座標系における磁場成分(Hx, Hy, Hz) がデータファイルには保存されており、地理座標系への変換には、磁場絶対観測値が必要になる。海洋島では年に 1ー2 回程度の絶対観測が行われており、この結果もあわせて公開されている。 なお、絶対観測値を参照した3成分の基線値補正は行っていないので、データ利用者が各自行う必要がある。
 現在公開されているのは、ポナペ [ポンペイ] (ミクロネシア連邦)、ホワンカヨ(ペルー)およびクリスマス島(キリバス共和国)における観測値で、長春(中国)とアテーレ(トンガ王国)のデータに関しては、準備が出来次第、公開する予定である。 また、観測点等のより詳しい情報も、今後、当ホームページで紹介する。
 海半球計画では、地球磁場観測に加えて、図3に示すような、通信業務を引退した海底ケーブルを用いた長基線電位差観測も行われている(Fujii et al. 1995; Vanyan et al. 1998; Shimizu et al. 1998)。 この電位差データも、今後公開される予定である。
図3 海半球海底ケーブルネットワーク
[参考文献]
Fujii, I., L.J. Lanzerotti, H. Utada, H. Kinoshita, J. Kasahara, L.V. Medford, and C.G. Maclennan  (1995) Geoelectric power spectra over oceanic distances. Geophys. Res. Lett., 22, 421-424.
Shimizu, H., T. Koyama and H. Utada (1998) An observational constraint on the strength of the toroidal magnetic field at the CMB by time  variation of submarine cable voltages. Geophys. Res. Lett., 25, 4023-4026.
Shimizu, H. and H. Utada (1999) Ocean Hemisphere Geomagnetic Network: its instrumental design and perspective for long-term geomagnetic observations in the   Pacific. Earth Planets Space, 51, 917-932.
Vanyan, L.L., H. Utada, H. Shimizu, Y. Tanaka, N.A. Palshin, V. Stepanov, V.Kouznetsov, R.D. Medzhitov, and A. Nozdrina (1998) Studies on the lithosphere and the water transport by using the Japan Sea submarine cable (JASC): 1.    Theoretical considerations. Earth Planets Space, 50, 35-42.
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