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パーソナル地震波形データ収集ツールNINJA

綿田辰吾(東京大学地震研究所)、竹内 希(東京大学地震研究所)
坪井誠司(横浜市立大学理学部)、深尾良夫(東京大学地震研究所)
 海半球ネットワークデータセンター(OHPDMC, http://ohpdmc.eri.u-tokyo.ac.jp)では、西太平洋地域を中心とする地域に展開している海半球ネットワークで集められた地震波形データと、IRIS(http://www.iris.edu)イベントFARM、国内の地震ネットワークからの広帯域波形データを公開している。 これには気象庁の広帯域地震観測網、TPC-1の海底ケーブル広帯域地震波形データ、地震研究所の地震地殻変動観測センターが展開している広帯域地震観測網が含まれている。
 これらの観測網からの連続、またはイベントデータはOHPDMCのホームページ上の統一されたインターフェースからSEEDフォーマットで入手可能である。 これら国内の観測網のデータセンターは、Java-RMIというネットワーク指向のプログラミングを用いて、ネットワーク化された単一のデータセンターシステムとして機能している。 それぞれのデータセンターはインターネットで結ばれ、それぞれの波形データを管理し、Java-RMIサーバを運用している。Java-RMIサーバはJava-RMIクライアントからのデータ要求を待ちつづけ、データセンター内で作成されたデータをクライアントへ送り返す。 Java-RMIクライアントは、電子メールやブラウザを通じて利用者からのデータ要求を受けて各データセンターのサーバへ転送し、処理されたデータをサーバから受けとり、利用者に取得可能になったことを知らせる。 ひとつのJava-RMIクライアントはすべてのデータセンターに対する要求を処理することができ、インターネットに接続されていればデータセンターの外部で運営が可能である。
 OHPDMCでは1台のJava-RMIクライアントを利用者に開放している。地震波形データセンターが、上記のようにネットワーク化されたデータセンターに参加するには、Java-RMIサーバを導入し、その観測網の全データレスSEEDを保有することが必要であり、準備が整えばJava-RMIクライアントに新しいサーバを登録する。このJava-RMIのシステムは既に1年以上運営されている。
 原理的にはJava-RMIクライアントはインターネット上のどのマシンでも運営が可能である。OHPDMCでは現在、NINJAと呼ぶパーソナルJava-RMIクライアントを開発している(図;NINJAの名前は変わるかもしれない)。
図 NINJAを用いたデータセンターのネットワーク化
 NINJAはJavaアプリケーションであり、単一の利用者のみが利用でき、他の利用者は利用できない。利用者がパソコンやUnixワークステーション上でNINJAを起動すると、ディレクトリサービスに格納された最新の情報を基に、インターネット上でデータセンターを探し、利用可能な地震 観測網と、観測点とチャンネル名を表示する。 観測網名や、観測点名、チャンネル名、地震の発生場所、震央距離、地域などの検索パラメータを設定すると、NINJAは該当するデータセンターと交信し、しばらく後にデータセンターからデータのダウンロード可能になったことを利用者に報告する。 OHPDMCから公開されているデータを扱うNINJAの開発はぼぼ完成し、近く公開、無料配付される予定である。
 NINJAは国内外の多くの地震波形データセンターを対象とすることが可能である。NINJA利用者は、各地のデータセンターからの連続、イベント波形データを同様な操作で取得でき、より多くのデータにアクセスできる機会に恵まれ、また各データセンターはより多くの利用者に認知される機会が増える。 NINJAにより利用されるためには、それぞれのデータセンターがJava-RMIサーバを運用し、データレスSEED(または、観測網の観測点情報へのインターフェース)を保有し、ディレクトリサービスに登録されればよい。ディレクトリサービスに格納される観測点情報は、各データセンターを定期的に探査することで自動更新される。 海外からの海半球ネットワークデータの利用促進のため、IRISが開発しているネットワークデータセンター、NetDCとの接続インターフェースが計画されており、NINJAの利用者はNetDCの波形データも利用できることになる。2000年度末にはNetDCとのインターフェースを持つNINJAのベータバージョンがOHPDMCから入手可能となる予定である。 NINJAはインターネット上のどこからでも起動することができるので、世界中のより多くの研究者に海半球ネットワークのデータを利用していただけるものと期待している。
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