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平成10年度の研究計画

海洋島観測研究班(第1班)
海洋底観測研究班(第2班)
システム開発研究班(第3班)
データ解析研究班(第4班)
総括班
海洋島観測研究班(第1班)
[広帯域地震観測グループ]
 新システムによる広帯域地震観測はテジョン(韓国)、バギオ(フィリピン)、ジャヤプラ(インドネシア)、パラパット(インドネシア)、石垣島、犬山において始まった。父島用のシステムも現在調整中で、間もなく観測が始まることであろう。残る3観測点も、平成10年度中には改修を終えたい。  パラオについては現地地主から観測点の移設をするようにいわれており、新たな場所(第2次世界大戦時の防空壕)で準備中であり、これが完了するまでにはまだ少し時間がかかる。よって、観測が再開されるのは平成10年度末になるであろう。ミクロネシアについては、現地での問題はなく、早い時期に記録システムの購入が出来れば、早期に完了される。カメンスコエ(ロシア)は極寒の地であり、現地の夏以外には我々がこの観測点を訪れることは難しい。システムが入手でき、調整が終わり、送り出す事が出来るのはどうしても、10月以後になるであろう。カメンスコエ観測点では、この時期は既に冬であり、時期的にかなり難しい。  既に新システムが設置された観測点においては多少の問題を抱えている観測点もある。例えば、「テジョンでは研究所から供給される電源電圧(100 V)が高く、無停電装置のリミッターが働き、異常電圧が加わったと判断されてしまうことがある」「バギオでは電話事情が悪くダイアルアップ機能が機能していない」等々である。全体的な保守点検も含め、個々の問題を解決し、早期に予定の性能に持っていく必要がある。
[GPS観測グループ]
 10年度もGPS連続観測点の維持と新設、そして臨時観測網を組み合わせ、フィリピン海プレート周辺域におけるプレート運動の解明を試みる。その議論から、プレートモデルでは十分に解明できていないプレート境界域における水平変動に関し、観測に基づき新たな見識を構築する。
1)GPS連続観測点の維持と新設  平成9年度、現地研究者との交渉が進捗せず、連続観測点設置が持ち越されたモンゴルのウランバートルに連続観測点を設置する。ウランバートル観測点は、その西方にアムールプレートとユーラシアプレートの境界が推定されており、アムールプレートに関し新たな情報を提供すると期待している。  また、9年度までに設置した連続観測点における観測を維持すると同時に解析を進める。とりわけ、カリマンタン(インドネシア)に昨年度設置したコタキバナール観測点は、フィリピン海プレート西端部のプレート運動を議論するうえで重要な参照点になりうると考察して設置したゆえに、いかなる水平変動が観測されるか大きな興味を有する。
2)プレート境界域におけるGPS臨時観測網  9年度から、連続観測だけでは十分に観測できないプレート境界域における水平変動を明確にする目的でフィリピン・インドネシア国境域で臨時GPS観測を実施してきた。当該域はフィリピン海プレートの南西端にあたり年間 8 cmを超える収束ベクトルが推定され、また西方からユーラシアプレートの沈み込みも予測されるなど非常に活発な地殻変動が考えられている。今年度は改測を試み、同域における地殻変動を明確にする予定である。  また、同時に、サハリンにおいてGPS連続観測からオホーツクプレート対ユーラシアプレートの運動を議論してきた。その結果、サハリン周辺域におけるプレート境界はサハリン西方の海域でなくサハリンを縦断している可能性が大となった。そこで、サハリンを縦断する形で臨時GPS観測を実施し、プレート境界の解明を計画している。文頭へ
海洋底観測研究班(第2班)
1)西太平洋の1000-kmメッシュ広帯域高性能地震観測ネットワークの建設に必要な海底孔内地震観測システムの設置へ向けて、陸上観測網と同等以上の性能を持たせるためのシステムを確立し、最適設置点の選定を行う。また、海底孔内用の実機を用いて陸上孔内地震・歪観測を開始し、海底孔内設置のシミュレーションを行うと同時に、長期安定性、データの評価を行う。インド洋に広帯域地震観測ネットワーク点を設ける掘削船航海に参加し、次年度の設置の準備を進める。
2)長期海底地震・電磁気アレー機動観測を継続し、9年度の成果を踏まえて数か月の観測をフィリピン海で実施する。
3)9年度にフィリピン海北部、オントンジャワ海台で実施した広帯域地震観測データの解析を進め、リソスフェア、マントル構造の特徴を抽出する。
4)海底測地用観測システムの試験を継続する。未開拓の分野であるため、変形速度の大きいプレート境界付近で測地学的に有用なデータを取得するレベルに達することが目標であり、そのための基礎実験を行う。
5)海底長期観測に関する国際ワークショップを共催し、これまでの成果と今後の展開を検討する。文頭へ
システム開発研究班(第3班)
1)海底電磁気観測
海底8成分電磁気観測システムを新たに1台製作し、日本周辺海域で1年間程度の長期観測を開始する。
2)海洋島電磁気観測
中国・長春と南鳥島に磁力計を設置して観測を開始する。キリチマチ及びポンペイにおける観測装置の保守と絶対測定を行なう。ミッドウエイでの観測のための予備調査を行ない、イースター島についてはフランスとの共同研究の可能性を探る。磁力計システムを3式製作する。
3)海底地球物理観測
超音波を用いた音響測距システム(海底地殻変動観測)を第2班と共同で製作し、試験観測を行う。海底堆積物中の温度・間隙水圧測定用のプローブを製作し、海中での計測試験を行う。
4)超伝導重力計観測
オーストラリア、インドネシアでの超伝導重力計観測を継続し、日本や南極昭和基地での観測データ、その他の世界の観測データと合わせて、地球深部のグローバルな動きを捕らえる。
5)海底地震観測
広帯域・長期海底地震観測を目指して、順次、要素ごとあるいはシステムとして海底試験観測を行い、機動的な観測手法を構築する。
6)海底ケーブル観測
グアム-二宮、グアム-フィリピン、グアム-ミッドウエイ、日本海ケーブルによる電位差観測を継続して実施する。二宮-沖縄および日中ケーブルによる測定を開始する。
7)長期電源
海底長期観測用海水電池1式を製作する。発電および給電特性を調べるためのテストを深海底において行なう。その結果をもとに、この電池を使用した地震および電磁気観測装置などの実用化を図る。
8)データ解析
 それぞれの分野で観測データの解析を行うとともに、データの公開を進める。文頭へ
データ解析研究班(第4班)
平成10年度の大きな目標は、ようやく発足したデータセンターをより充実させることにある。すなわち、旧ポセイドン地震観測網の全てのデータを海半球ネットワーク地震観測網のデータと同一感覚で扱えるようにするとともに、他機関から公開されている広帯域地震計データについても海半球データと同一感覚で扱えるようなシステムを開発する。また西太平洋GPS観測網(WING)のデータや海半球海底ケーブルの地震計データなどについても、海半球データセンターにアクセスしさえすれば入手できるシステムを順次作り上げる。  データセンターにしかできない研究として、地球内部構造に関するAdaptive Seismologyを推進する。これはデータセンターに次々と送られてくるデータを直ちに解析し、逐次的に地球モデルを更新していくスタイルの研究である。これを海半球データセンターのPreliminary automated Earth modelとして、ホームページを通じて公開する体制を今年度に確立する。またデータ解析の基本的道具としての地震波形計算手法の開発を進め、ソフトウェアパッケージにしてデータセンターから公開する。文頭へ
総括班
1)総括班の重要な役割の1つに、「研究の進展に対応して弾力的に計画の見直しを行なう」ことがある。平成10年度は5か年計画の半ばで節目にあたる年なので、この点検が特に重要となる。
2)平成9年度に開催した国際シンポジウム、Ocean Hemisphere Project (OHP) International Sympo- sium on "New Images of the Earth's Interior through Long-term Ocean Floor Observations"に関連して、国際誌EPS(Earth Planets and Space)に特集号を組む。
3)総括班会議の開催、事務局の運営など、例年通りの活動。文頭へ