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国際共同研究計画SEASについて

山野 誠(東京大学地震研究所)
SEASとはScience of East Asian Seasの略称で、フィリピン海プレートを中心とした東アジア海域における固体地球科学研究を、国際共同研究として推進しようという計画である。 本年3月に開かれた国際ワークショップによって体制作りが始まったばかりの段階であるが、西太平洋地域を主な観測対象とする「海半球ネットワーク計画」とも密接に関連するものであるので、その概要を紹介したい。
この計画は、西太平洋地域の縁海の研究に関する、Texas A&M大学のTom Hilde氏と日本の研究者による議論に端を発したものである。1998年7月の台湾WPGMでは、Hilde氏と日本、中国、台湾の研究者による会合が開かれ、 フィリピン海及び周辺海域の研究の新たな進展を目指し、観測船の提供を含めて国際共同研究を推進するという点で合意がなされた。また、研究目的や共同研究の進め方を議論するために、ワークショップを開催することが提案された。 これを受けて、1999年3月18、19日の2日間、SEAS国際ワークショップが東京で開催され(主催:海洋科学技術センター)、日本、中国、台湾に加えて、フィリピン、オーストラリア、フランス、イギリスの各国から、東アジア海域に関心を持つ研究者約30名が参加した。
 このワークショップでは、まず各参加者が、西太平洋地域における最近の研究成果、研究計画(既に進行中のもの、及びプロポーザルやアイデアの段階のもの)、また新しい観測機器や研究船等について発表を行った。 これに基づいて、研究対象地域について検討した結果、多くの参加者の興味が集中した3海域、1) フィリピン海プレート、2) 沖縄トラフ南西部、3) 南シナ海北部、に重点を置くことになった。 フィリピン海プレートはさまざまな年齢の海盆から構成されているが、このうち最も古い西フィリピン海盆は、基礎的な観測データが不十分であることから、WPGMの時点から第一のターゲットと目されていた場所である。 沖縄トラフ南西部の台湾側海域では、既に台湾とフランスの共同観測が実施されており、フランスの潜水船Nautileによる潜航調査も提案されている。これに日本が加わり、日本側海域でも同様な調査を行う方向で協議が進みつつある。 南シナ海北部では、これまでにも中国と日本、米国などが共同研究を行った実績があるが、他の周辺諸国も交えてさらに研究が進展することが期待される。これら3つの海域についてはワーキンググループを設ける予定であり、その中で具体的な研究計画の検討が行われる。
 ワークショップでは共同研究の進め方についての議論も行われ、SEASという一つの大きなプロジェクトを立ち上げるのではなく、InterRidgeを参考として、各国における研究の調整と推進を中心とした活動をすることで合意した。 すなわち、ワーキンググループにおける研究内容の議論に加えて、観測航海やデータ、アイデア等の情報交換、研究者や観測機器の相互乗り入れの促進、といった役割を果たすことになる。 特に、 SEASが対象とする海域の大部分は周辺諸国の経済水域であり、その意味でも十分な情報交換と協調が必要であると言えよう。一方、研究船の運航を含む実行予算については、SEASの枠組みの下で各国の研究者が独自に獲得することが求められる。
 これらの活動を行うための組織として、運営委員会と事務局が設けられる。SEASには、ワークショップに参加した国に加えて、米国、ロシア、韓国、及び東南アジア諸国の参加が期待されており、これらの国の代表を含めて運営委員会が構成される見込みである。 参加国からの分担金の徴収はしない方針であり、インターネットを利用した情報交換を中心に、なるべく経費を抑えた運営を行うことが必要となる。事務局は、当面、東海大学海洋学部に置くことが決まり、既に SEASのホームページ
http://masahp.or.u-tokai.ac.jp/SEAS/
を開設するという活動が行われている。今後、各国から寄せられた情報がこのホームページを通じて提供されることになる。なお、2000年6月には東京で WPGM が開かれるが、その際に次の全体会議を持つことが計画されている。
 以上、ワークショップの報告を中心にSEASの紹介をしたが、この計画を進めていくには、海半球ネットワーク計画を含め、関係するプロジェクト・機関によるサポートが不可欠である。皆様のご協力をお願いしたい。 また、西太平洋地域(上記の3海域に限らず)における研究計画についての情報、SEASについてのご意見・ご提案があれば、事務局(木下正高氏、masa@scc.u-tokai.ac.jp)宛にお寄せいただきたい。