領域研究の目的
(1) カムチャッカ・千島から日本を経て伊豆小笠原・マリアナに至る世界最大の沈み込み帯に沿ってスタグナントスラブの全貌を観測により明らかにする。このため北西太平洋域を、スタグナントスラブの形状により極東ロシア域、日本域、フィリピン海域の3地域に分けて、特に分解能の低い極東ロシア域とフィリピン海域において長期アレー地震・電磁気観測を実施する。得られたデータに基づき従来よりも格段に鮮明なスタグナントスラブ像を得て、スタグナントスラブの顕著な形状変化が何に起因するかを観測の側から明らかにする。
(2) 沈み込むスラブが上部・下部マントル境界付近で滞留するメカニズムと下部マントルへ崩落するメカニズムをマントル物質に関する高温高圧実験により明らかにする。このためスラブと周囲マントルとの相転移反応の違い、弾性波速度・電気伝導度などの物性の違いを明らかにし、また両者の間の(特に脱水反応を媒介とした)熱的・化学的相互作用を解明する。
(3) 沈み込むスラブが遷移層に滞留するメカニズムには、相転移反応、粘性率の温度・物質依存性、スラブの内部構造などが関与している。これらの要素がそれぞれマントル対流にどのように影響するかを明らかにする。またそれらを総合し現実の地球に近いパラメタ空間・モデル空間で世界最速のコンピューター「地球シミュレーター」を動かし対流モデリングを行う。その結果と観測・実験結果とを合わせてスタグナントスラブの滞留と崩落のメカニズムを明らかにする。また滞留と崩落の過程がプレート運動史ひいては地球史に及ぼす影響を明らかにする。

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