領域設定の意義
地震・火山活動、山脈・海溝形成、大陸移動・海洋底拡大などの地球活動を、マントル対流を異なる時間・空間スケールで切り出したときの諸現象とみなし、それら全体を統一的に理解しようとする努力が続いている。しかしこの多分野にまたがる領域において個別成果ではなく1つの研究潮流を生み出すのは容易ではない。そのためには、プロジェクトに独自の切り込み口を確保しそこに特色ある研究手法を持ち込むことが必須である。本領域研究のタイトルである「スタグナントスラブ」の現象は、その発見から一般的存在の検証まで(命名まで含めて)一貫して本領域参加者がリードしてきたもので、今、マントルダイナミクスにおけるその役割が注目されている。スタグナントスラブが注目されるのは、単にそれがマントル遷移層において最も際立つ現象というだけではなく、マントル対流の非定常性と関わってプレート運動史ひいては地球史を理解する1つの鍵と見られるからである。本計画はこの「スタグナントスラブ」の概念を独自の切り込み口とし、そこに日本が世界に誇る海底地球物理観測技術と高温高圧実験技術を特色ある研究手法として持ち込み、下降流の側からマントル対流の全容に迫るものである。このアプローチは日本の観測・実験・計算機科学の最先端実績を結集した独自のものであり、1つの研究潮流にまで発展する可能性が高く領域設定の意義はきわめて大きい。

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