研 究 目 的
研究目的
 本領域は、日本の地震グループが確立した「スタグナントスラブ」の概念をキーワードに,地球物理観測、超高圧地球科学、計算機科学の先端グループが結集し、マントルダイナミクス研究に新展開をもたらすことを目的に設定される.具体的には(1)カムチャッカから日本を経てマリアナに至る世界最大の沈み込み帯に沿ってスタグナントスラブの全貌を明らかにするため、特に分解能の低い極東ロシア域とフィリピン海域において長期アレー地震観測・電磁気観測を実施する。(2)沈み込むスラブが上部・下部マントル境界付近で滞留するメカニズムと崩落するメカニズムをマントル物質に関する高温高圧実験により明らかにする。(3)現実の地球に近いパラメタ空間・モデル空間で世界最速コンピューターによる対流モデリングを行い、その結果と観測・実験結果とを合わせて、スタグナントスラブの滞留と崩落のメカニズムを明らかにする。また滞留と崩落の過程がプレート運動史ひいては地球史に及ぼす影響を明らかにする。
本領域は、イメージング(観測)とモデリング(実験,計算機科学)という異なるアプローチの4つの研究項目を設定し、それらが総括班の統括のもとに互いに密接に連携して、スタグナントスラブの実態解明を通してマントルダイナミクス研究の新潮流形成を目指す。
領域内での研究の有機的な結合により、新たな研究の創造が期待できる点
 「スタグナントスラブ」をキーワードとしてマントルダイナミクスの新展開を図る機は熟している。即ち、新プログラム「海半球計画」により日本のグローバル観測技術は世界トップクラスに達し特に固定観測網を補完する海底機動観測装置の開発実用化により、ターゲットを絞った長期の高分解能観測が可能となった。また特定領域「超高圧物質科学」によりもともと世界をリードしていたこの分野はその立場を一層強固なものとし、今後は観測と直接比較しうる物性測定へ歩を進めようとしている。更に科学技術振興調整費「地殻変動予測」により、世界最速コンピューター「地球シミュレータ」の能力をふるに生かした他で真似のできないマントル対流シミュレーションの準備が進んだ。この絶好のタイミングを逃さず観測・実験・計算機シミュレーションの3分野が結集することにより、マントルダイナミクス分野に新しい流れを生み出すことが期待される
当該分野におけるこの研究(計画)の学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義
 マントルダイナミクス分野において1つの潮流を作り出すような重層的研究を展開することは容易ではない。それを可能にするためには、プロジェクトに独自の切り込み口を確保しそこに特色ある研究手法を持ち込むことが必須である。「スタグナントスラブ」現象は、その発見から一般的存在の検証までを(命名まで含めて)一貫して本領域参加者がリードしてきたもので、今、マントルダイナミクスにおけるその役割が世界的に注目されている。スタグナントスラブが注目されるのは、単にそれがマントル遷移層において最も際立つ現象というだけではなく、マントル対流の非定常性と関わってプレート運動史ひいては地球史を理解する1つの鍵と見られるからである。本計画はこの「スタグナントスラブ」の概念を独自の切り込み口とし、そこに日本が世界に誇る海底地球物理観測技術と高温高圧実験技術を特色ある研究手法として持ち込み、下降流の側からマントル対流の全容に迫るアプローチを取ろうとするものである。このアプローチは日本の観測・実験・計算機科学の最先端実績を結集した独自のものであり、1つの研究潮流にまで発展する可能性が高く領域設定の意義はきわめて大きい。
国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ
 本領域は、構成する研究手法(陸域観測・海域観測・高温高圧実験・計算機シミュレーション)のそれぞれにおいて世界最先端のレベルにある。しかし、本領域が目指している、異なる手法の結集によりマントルダイナミクス分野に新しい流れを生み出すという大きなスコープをもったプロジェクトは海外においても例がない。国内においては、平成16年度に終了する特定領域「深海掘削および先端海底探査技術を駆使した海洋底ダイナミックスの研究」があるが、地質学的手法を主としている。海底表層の地球物理探査等は行われるが、マントル深部構造・高温高圧物質科学・対流シミュレーション研究はいずれも対象外である点でも、本領域とは明らかに異なる。

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