研究計画・方法
 本研究では、滞留スラブの構造を直接対象とする解析としては、(1)実体波走時トモグラフィー(大林・深尾)と、表面波を含めた波形インバージョン(竹内)を用いた西太平洋沈みこみ帯滞留スラブの高分解能イメージング;(2)ScS反射波・Ps変換波解析及び実体波波形解析による西太平洋沈み込み帯マントル遷移層の凹凸推定(末次、東野);(3)スラブ滞留のメカニズム解明に関係して、スラブ内部構造・海洋性地殻の構造の推定(神谷、末次)、をターゲットとする。また、(4)ロシア・フィリピン海の地震・電磁気データを管理し、領域参加者の利用に資するためのデータセンターを立ち上げ、運用する(坪井、山田、石原)。
用いるデータとしては、IFREEで構築している既存観測点データによる走時データベースとISCデータ、グローバル既存観測網のデータ、日本列島のHi-net、F-netデータ、そして千島・カムチャツカとフィリピン海の分解能を大幅に向上させるために当該領域で新設される臨時観測点のデータを用いる。
手法と目標とする空間分解能としては、上記(1)実体波走時トモグラフィーでは3次元P波速度・S波速度構造を同時に決定する走時トモグラフィー法を用いて滞留スラブ付近で50-100kmの空間分解能でイメージングし、波形インバージョンでは高次ボルン近似に基づく手法を用い、1000-2000kmの空間分解能を目指す。上記(2)のマントル遷移層凹凸の推定では、西太平洋沈み込み帯全域の410,520,660kmまた900-1200km付近に存在する可能性がある速度不連続面の深さとそこでの速度・密度変化を空間分解能300km以下の分解能で推定する。(3)スラブ内部構造・沈み込む海洋性地殻の構造推定では、深発地震からのSP、PS変換波やScSp波をHi-net、F-netでとらえ、空間分解能数kmでのイメージングをおこなう。
本研究は16年度半ばから開始予定であり、新たに展開するロシア・フィリピン海の臨時広帯域観測点からのデータが蓄積されて本格的に解析可能となるのは17年度後半以降である。そのため16・17年度前半は、まず上記(7)のデータセンターを立ち上げる。17年度後半からは、ロシア・フィリピン海データを加えて上記(1)-(4)の解析を行い、滞留スラブの高分解能イメージングを実現する。
平成16年度
(a)17年度以降取得される地球物理学的観測データを当該領域メンバーの研究に資するためのデータセンターを立ち上げる。本研究で取得・蓄積するロシア・フィリピン海の広帯域連続記録を管理・運営するためには、固体地球統合フロンティアが現有資源では不足のため、サーバー用コンピュータとディスクを購入する(上記(4))。
(b)当該領域研究による新データが蓄積されるまでは、日本列島の高密度なHi-net、F-netデータや西太平洋域地震観測データを用いて、高分解能トモグラフィーや反射波・変換波解析をおこない、上記(1)-(3)の研究を開始する。データ解析用コンピュータを購入する。研究開始にあたり、研究打ち合わせをおこなう。
平成17年度
16年度に開始した上記(1)-(3)の既存データ解析を続行する(全員)と共に、(4)のデータセンター運用のためのテストを行い、17年度後半からの新データ蓄積に備えて準備を整え、後半にデータセンターの運用を開始する。データセンターのためのディスク装置・データバックアップ装置や消耗品とデータ整理のための研究補助員、成果発表のための国内外旅費が必要である。
平成18年度以降
蓄積されたロシア・フィリピン海データを用いて上記(1)-(4)を実施する。データ解析を増強するためのコンピュータ、データ蓄積のためのディスク、3次元モデル可視化装置を購入するほか、成果発表のための外国旅費が必要である。

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