研 究 目 的
研究目的
沈み込むスラブおよびマントル構成鉱物高圧相の上部マントル~マントル遷移層領域における相転移境界、密度・弾性波速度、熱膨張率、電気伝導度等の物性を、我が国のお家芸である大型マルチアンビル装置を用いた超高圧実験とSPring-8における放射光実験を組み合わせることにより精密に測定する。特にマントル遷移層および沈み込むスラブにおいて重要な高圧相であるメージャライトざくろ石に一つの焦点をあて、その物性を様々な手法により明らかにする。またこれ以外の沈み込む地殻関連物質や周囲のマントルを構成する高圧相に対しても、現実的化学組成の物質を用いてその相変化や物性変化を明らかにし、スラブの滞留過程の物質科学的モデリングをおこなう。
領域内での研究の有機的な結合により、新たな研究の創造が期待できる点
 領域内の地震学的・電磁気学的観測、解析により得られるマントル遷移層およびスラブの地震波速度分布と、本研究により得られる鉱物高圧相の弾性波速度などの物性を対比させることにより、これらの構成物質に対して重要な物質科学的制約を与えることができる。また、数値シミュレーションによるスラブの運動の解析に重要な高圧相の密度や熱膨張率のデータを提供し、これによりスラブの滞留過程を定量的に明らかにできる。更に、崩落過程の物質科学的モデリングとあわせて、スラブの全マントル領域における運動とそのゆくえを包括的に解明できると考えられる。尚、研究項目A03計画研究(カ)がダイヤモンドアンビル装置を用いたより深い下部マントル領域におけるスラブ崩落の動的過程に焦点を合わせているのに対して、本研究ではより精密な実験が可能な大型マルチアンビル装置を用いた上部マントル~マントル遷移層における滞留過程の物質科学的モデリングに重点をおいている。
当該分野におけるこの研究(計画)の学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義
 本研究は大型超高圧装置と放射光X線その場観察装置を組み合わせた高温高圧下物性精密測定技術と、超高圧下における多成分系高圧相の合成・焼結体作成技術を結びつけ、上部マントル~マントル遷移層領域において従来にない高い精度での各種物性測定をおこなう点に大きな特色がある。本研究によりスラブダイナミクスの定量的理解のための基礎的データが初めて得られることになり、地球深部科学の新たな展開において重要な貢献が期待される。
国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ
 大型超高圧装置と放射光X線その場観察装置を組み合わせたX線その場観察実験は我が国のお家芸であり、他の追随を許していない。高圧力の物性、特に弾性波測定の面では米国などのグループに若干遅れをとっていたが、この方面においても本計画研究グループでは最近高精度の測定を可能にした。このような物性測定技術と、最先端のX線その場観察実験を組み合わせることにより、高温高圧下での物性精密測定実験において世界をリードする研究が可能である。また、本グループでは急冷回収実験によるマントルおよびスラブ構成物質の相変化や合成において、世界を先導する研究をおこなってきており、本実験手法をこのような多成分系に用いることにより、現実的なスラブやマントル物質の挙動解明において、国内外の追随を許さぬ研究成果が期待される。

第3世代放射光実験施設(SPring-8:左)に設置された2台のマルチアンビル超高圧発生装置(中)と、
愛媛大GRCの高圧下弾性波測定システム(右)

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