Ocean Hemisphere network Project
OHP

OHPについて

海半球ネットワーク計画とは
背景
観測ネットワークについて


「海半球ネットワーク」計画とは
海半球ネットワーク ─地球内部を覗く新しい目─ 」は平成8年4月から文部省新プログラム(科学研究費補助金創成的基礎研究費)として発足した研究計画です。このプログラムは5ヶ年の計画で、今まで観測空白域であった太平洋に広域地球物理観測網(海半球ネットワーク)を建設し、地球内部へ向けられた新しい窓から地球の中を覗き込み、表層から中心部までの地球の動きの痕跡を検出し、地球活動の根源解明に迫ろうとするものです。プログラムは東京大学の地震研究所、海洋研究所、理学部・理学系研究科の研究者が中心となり、全国21機関の100名あまりの研究者が参加しています。また、平成9年4月にはこの計画を進める拠点として、地震研究所に「海半球観測研究センター」(Ocean Hemisphere Research Center)が設置されました。

背景
 地球は、直径およそ7000kmの金属鉄のコアの上に厚さ約3000kmの岩石のマントルがあるという2層構造を持っています。マントルとコアは、地球の誕生以来、それぞれの層内での対流運動によって冷却し続けてきました。地球の表層で観測されるプレート運動は、このマントル対流の現れです。
 1970年頃に確立したプレートテクトニクス理論では、海嶺で作られ、海溝でマントル内に沈み込むプレートの運動が、様々な地球活動の原因であり、大陸移動や海洋底の拡大を生じ、地震や火山現象、地殻変動、地質現象の原動力であると考えてきました。このプレートテクトニクスの考え方は、地球の活動を分かりやすく理解するための助けとなり、またプレートテクトニクスの理論を証明しようとして、活発な観測が行われるきっかけとなっりました。しかし、より深部の活動であるプレート運動そのものの原動力については、まだはっきりした説明は与えられていません。
 1990年代に入り、地球の内部を伝わる地震波の観測などによって、地球深部の水平方向の不均質構造が明らかになり、コアとマントルの境界から熱いマントル物質が地表に向かう上昇流(スーパープルーム)の存在や、海溝で沈み込んだプレートがやがてはコアまでも達するというような、地球深部の活動に関する新しい姿が描かれるようになりつつあります。これらの地球深部の活動は、プレート運動に反映されるだけでなく、表層の大気や海洋の活動にも影響を与え、大規模な海面変動や気候変動を引き起こしてきたとも考えられています。コアに関しては電磁気観測の結果から、コアの表層の流体運動や磁場の生成過程が推定され、マントルとの相互作用が明らかになりつつあります。コアは液体の外核と固体でできた内核からなっています。内核の異方性や回転が地震学から求められ、外核の磁場生成過程との関係が議論されています。このように、地球は中心部にある内核から表面の大気、海洋までを巻き込んだ一つのシステムとして互いに密接に関係しながら活動しています。
 地球活動に関するこのような全体的なダイナミックな姿は、プレートテクトニクスの確立以来盛んになった地球観測に基づくものです。しかし、地球全体の活動の実態を本当に確かめようとすると、従来の観測では不十分です。地球活動の真の姿を解明するには、地震観測所や地磁気観測所等によって長期的に観測を続けることが必要ですが、これまでの長期観測は陸地が中心であり、地球表面の約3分の2を占める海での観測は少数でした。グローバルな地球の活動の観測のためには、この海での観測が必須であることが明らかとなったのです。プレートの生成の場所である海嶺や沈み込む場所である海溝はどちらも海にあり、その下の活動を眺めるためにはどうしてもこれらの真上からの観測が必要とされます。また、海底地殻は大陸の地殻に比べると構造が一様で薄いため、海での観測はその深部を覗き込むためによりよい場所となっています。しかし、陸地の地震や地磁気の観測所に相当するような、長期的な地球物理観測を行う観測点は海底にはなく、地球表面の半分を占める太平洋は観測希薄域となっていました。このために、地球内部の像は極めてぼんやりしたものでした。さらに解像度をあげ、地球活動の現場をつぶさに見るためには海での観測網の整備が望まれていました。

「海半球ネットワーク」について
 「海半球ネットワーク」計画は、太平洋を中心とする半球(海半球)に地球 物理観測網を構築しようとする計画です。海半球の観測ネットワークは地震、電磁気、測地(GPSと重力)のネットワークが中心となります。

地震のネットワーク
 これまで展開していた、ポセイドン観測網、つまり海洋島におかれた西太平洋の観測網に、海洋底の地震観測点、国際深海掘削計画による掘削孔に設置される孔内地震計等の観測点を加えることによって、ほぼ1000km間隔で西太平洋を覆う観測網です。

電磁気のネットワーク
 太平洋地域の地磁気観測所はハワイやポリネシア、グアムぐらいでしたが、海半球ネットワーク計画では、新たな海洋島の観測点と海底の観測点を設置して、太平洋に広く地磁気観測点を展開する計画です。海底の観測点は島の少ない北西太平洋に主に設置します。これらの海底及び海洋島の観測点では磁場の3成分を測定するフラックスゲート磁力計と安定した全磁力測定が可能なプロトン磁力計を装備し、従来分かっていない10年以下の周期のコア起源の磁場変動をとらえることを、目標としています。海半球計画ではこれらの海洋島及び海底に設置する地磁気観測所に加えて、かつては国際通信のために用いられていた海底ケーブルを利用して、数1000kmよりも長い距離での電位差変化の測定を行い、コアに流れる電流のもれを直接捕まえる試みを行います。これらの電磁気観測網は、コアのダイナミクスの研究に寄与するだけでなく、マントルの電磁気構造のグローバルな様子を明らかにするためにも用いられます。

測地のネットワーク
 測地観測網はGPS観測網と、超伝導重力計観測で構成されます。GPS観測網は日本に重大な影響を及ぼすフィリピン海プレートの動きを実測し、マントル対流の表面の動きをリアルタイムに実測することを目指しています。超伝導重力計観測網は従来は北半球の中緯度地方にしかなく、グローバルな動きをとらえるためには南半球や低緯度及び高緯度地域に設置することが望まれていました。日本では現在南極昭和基地で観測が続けられていますが、海半球計画では、さらに南半球や赤道近傍に重力計を設置することによって、重力測定から内核の動きや地球の変形をとらえることを目的としています。


「プロジェクト」について
 海半球ネットワーク計画でネットワーク整備を目標として行おうとするプロジェクトを図2にまとめます。
プロジェクト
海洋島地震観測ネットワーク
海洋島GPS観測ネットワーク
海洋島電磁気観測ネットワーク
超伝導重力計観測網
海底地震観測システム
海底地球電磁気観測システム
海洋底孔内地震観測システム
海洋島地震機動観測
海洋底機動観測調査
海洋底地球物理観測
海底観測 のための超音波伝送、衛星通信、長期電源等の開発を行うプロジェクト
観測データを収集し、世界中の多くの研究者に利用できるようにするとともに、データ解析を行うプロジェクト
「海半球ネットワーク」計画では、この12のプロジェクトを、
総括班(代表者:深尾良夫)と4つの計画研究のグループ
海洋島観測研究班(代表者:山田功夫)
海洋底観測研究班(代表者:末広潔)
システム開発研究班(代表者:浜野洋三)
データ処理解析研究班(代表者:深尾良夫)
で協力しながら行う予定です。

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海半球観測研究センター
 〒113
 東京都文京区弥生1-1-1
 東京大学地震研究所
    tel: 03-3812-2111