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平成11年度の研究計画

海洋島観測研究班(第1班)
海洋底観測研究班(第2班)
システム開発研究班(第3班)
データ処理解析研究班(第4班)
総括班

海洋島観測研究班(第1班)

[広帯域地震観測班]
 今年度は最後に残ったカメンスコエ(ロシア)の記録計の入れ替えを行う。この観測点は航空路の便が非常に悪く、カムチャッカの中心の町ペトロパブロフスクカムチャツキーからカムチャッカ半島北の乗り継ぎ地コルフまでは週3便、 ここから観測点のあるカメンスコエまでは週1便の地である。うまく乗り継いでいったとしても日本からは4日かかる遠隔地である。そこで、システムの入れ替えを機会に観測点をコルフに移すことを考え、場所の検討を行った。 10年度に現地調査も行ったが、この地域全体が永久凍土であり、地下室を作るには大がかりな工事が必要になる。このための費用などのことを考えると、今回は断念せざるを得ない状況である。
 小笠原から中国大陸にかけての広帯域臨時観測の計画があるが、この件については別稿で紹介する。

[GPS 観測班]
 10年度の成果に述べたように、GPS観測による西太平洋周辺域におけるプレート運動の検出は成果が得られているものの、その時間的な揺らぎや、より詳細な空間変動などで多くの課題を有している。 11年度も西太平洋域でのGPS 連続・繰り返し観測を継続しなくてはならない。また、GPS weekが1024を超えることによる観測支障対策も全点で必要である。

海洋底観測研究班(第2班)

1)日本海溝における海底孔内地球物理観測
 西太平洋の1000 km 広帯域高性能地震観測ネットワークの建設に向けて、海底孔内地球物理観測点を日本海溝の2点に設置する。 孔内への観測計器設置及び海底記録部の設置は、ODPの掘削船ジョイデスレゾリューション号にて、7月から8月にかけて行う。その後9月に海洋科学技術センターの無人潜水艇により、観測システムへの電源の投入を行い、観測を開始する。 観測項目は、高感度の体積歪み、広帯域地震(2種類の地震計)、傾斜であり、広いダイナミックレンジを確保する。オフラインの記録方式であるので、観測開始半年後に海底記録部からデータの回収を行う。

2)北西太平洋における広帯域地震・電磁気観測
 北西太平洋において、海底広帯域地震・電磁気観測を6ヶ月以上の長期にわたって行い、本年度に設置する日本海溝の海底孔内地球物理観測点を含めたアレイ観測を行う。これらの観測データから、北西太平洋下の上部マントル不均質を明らかにする。

3)プレートの移動・変形の海底観測
 海底において、これまでにない新しい測地観測を行うことにより、テクトニクス・ダイナミクスの新知見を得ることを目的としている。この分野は未開拓であるため、計測システムの開発改良・試験観測を、前年度から引き続き行い、海底での測地データの取得をめざす。

4)フィリピン海における広帯域地震・電磁気アレイ観測
 フィリピン海下の上部マントル・リソスフェアの詳細な構造を明らかにするために、フィリピン海を横断する測線上に海底広帯域地震・電磁気観測点を高密度に展開してアレイを構成し、長期間(6ヶ月以上)観測を行う。 海域における測線延長上の中国大陸にも観測点を設置して、長大な測線を構成する。

5)データ解析
 昨年度までに得られた海底での広帯域記録の解析を続行して、リソスフェア・上部マントル構造の特徴の抽出を行う。同時にデータの公開についても進める。

システム開発研究班(第3班)

[超伝導重力計観測]
 ノルウエー・スピッツベルゲン島のニーオルスンに9月に超伝導重力計を設置する。

[フィリピン海アレー観測]
 1班・2班と共同して、フィリピン海から中国大陸までの大規模アレー地震・電磁気観測を行なう。

[海底電磁気観測]
 7月の白鳳丸航海において、北西太平洋に長期型海底電磁気ステーションを設置する。

[海洋島電磁気観測]
 トンガおよび南鳥島(Marcus)に磁力計システムを設置する。他の観測を継続する。

[海底地球物理観測]
 三陸沖日本海溝付近におけるGPS/音響測位実験に向けた共同研究に関しては、スクリップス海洋研の航海に乗船し、10年度に導入した深海底用の精密測位音響トランスポンダ3台をファンデ・フカ海嶺付近の海底に設置し、距離を変えてS/N比を確認する実海域実験を行う。 小型精密音響測距システムは、10年度の実海域試験を経て、船上装置を改良中であり、11年4月の淡青丸航海において、大型のブイに3本のGPSアンテナを取り付けて本格的なGPS/音響測位実験を行い、性能評価と問題点の改良を図る。 海底熱流量・間隙水圧の長期計測装置については、温度・圧力センサプローブを製作し、堆積物中に突き刺しての短時間の計測試験、プローブを切り離して自己浮上方式によりデータロガーを回収する試験を行う。

[海底地震観測]
 これまでに部分的に試験してきた長期広帯域海底地震計による観測を実施する。まず、東京大学海洋研究所の白鳳丸航海(KH99-3)により北西太平洋に1台を設置し、約1年間の連続記録を取る。 ここで使用する地震計では、耐衝撃性が高いGuralp製CMG-1Tを新規開発したレベリング機構に載せ、低消費電力で大容量(約24 GB)のハードディスクレコーダーを採用し、これらを直径65 cmのチタン球1個に組み込み自己浮上型とする予定である。 また、フィリピン海プレートを横断する測線上に稍広帯域の長期海底地震計を複数設置する計画も進めている。

データ処理解析研究班(第4班)

1)データセンターの充実
 別稿に述べたように、海半球ネットワークデータセンターでは現行の海半球ネットワーク地震観測網データの公開に加えて、平成11年度より東京大学地震研究所の関東甲信越地震観測網の広帯域(センサー:CMG-3T)のデータ、 気象庁のSTS-2のデータ、三陸沖海底ケーブルとTPC-1の地震計、ハイドロフォン、津波計のデータを、各地震観測網の協力を得て公開する。また地震波形の計算と解析のためのソフトウエアをつぎつぎと開発し公開していく。

2)西太平洋域のマントル遷移層の地震学的微細構造のマッピング
 西太平洋域は世界で最も活発なマントル下降流域であり、ここにはグローバル観測網以外にも、海半球ネットワークや日本のJアレーが展開され、11年度から12年度にかけて海半球グループによる大規模臨時観測も予定されていて、他では得られない高密度・高品質なデータが入手できる。 この特徴をフルに活かし、また海半球計画で開発した解析ソフトをフルに使って、マントル下降流の実態解明に直接つながる遷移層微細構造のマッピングを行う。

3)海半球電磁気観測と非球対称電気伝導度構造推定の試み
 海洋島磁場観測網データおよび海底ケーブル電位差データの公開をする。これらのデータと、現存する磁場観測所で公開されている磁場データおよびアメリカの研究グループによって観測されている海底ケーブル電位差データをコンパイルし、 マントルの3次元電気伝導度構造推定に向けたデータセットの作成をする。また、3次元構造を持つ地球深部の電磁誘導のモデリングの結果と大陸や海洋における観測データを比較し、非球対称電気伝導度構造の推定を試みる。

総括班

1)総括班会議を年2回開催し、5年目以降のネットワークの維持発展方法と新しい研究展開を検討準備する。

2)総括班事務局においてニュースレターの発行、ホームページによる情報公開と情報交換を行う。

3)各研究グループの計画を取りまとめ、次年度の実施計画書を策定する。

4)海半球国内ワークショップ及び全体会議を開催する。

5)国際シンポジウム「GPSの地球科学への応用」を10月第3週に筑波国際会議場にて開催する(共催)。

6)本年度から始まるフィリピン海ー中国大陸横断長期臨時観測計画の実施を統括する。