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海半球ネットワークデータセンターで公開される地震波形データ

綿田辰吾、深尾良夫(東京大学地震研究所)、坪井誠司(防衛大学校)
 海半球ネットワークデータセンターでは、平成11年度より、東京大学地震研究所の関東甲信越地震観測網の広帯域(センサー:CMG-3T)のデータ、気象庁のSTS-2のデータ、 三陸沖海底ケーブルとGeO-TOCケーブル(旧TPC-1)の地震計、ハイドロフォン、津波計のデータを、各地震観測網の協力を得て公開する予定である。 これらの連続波形データは、衛星システムにより地震研究所にWINフォーマットで転送されており、海半球データセンターで国内外の研究者に知られているSEEDフォーマットに変換して公開する。 SEEDフォーマットには波形情報と共に、広帯域波形データ解析に必要な観測点の情報(コード名、位置、センサー方向、時刻補正、センサー特性、アナログ・デジタルフィルター特性、感度、基準周波数等)が含まれている。
 これらのデータは観測網ごとにネットワーク上に分散配置され、オブジェクト指向の分散処理をJava-RMIを用いて実現し、利用者からのデータ要求を分散処理する(図1)。
図1 データ要求受付とデータ配付の分散処理:ユーザ(User computer)は電子メールやWWWを通じて海半球ネットワークデータセンター(OHP computer)へアクセスする。 海半球データセンターが受けたデータ要求は、各観測網のデータセンター(continuous data server)へ振り分けられる。各データセンターで該当データがSEEDフォーマットに変換され、海半球データセンターへ届けられる。 海半球データセンターと各データセンター間では、Java-RMIを用いてネットワーク上で分散処理を実現している。

利用者は、海半球データセンターへブラウザまたは電子メールでアクセスする。海半球データセンターのマシン(Java client)は、利用者の要求リストを基に、各データセンターへSEEDファイル作成を要求する。 観測網ごとのSEEDファイルの作成は、基本的にはデータを保持するローカルなマシンで行われる。各観測網のマシン(Java server)はJava clientからのSEEDファイル作成要求を受け付け、作成したSEEDファイルを要求があったJava clientへ返送する。 Java clientとserver間の通信にはhttpプロトコルを用い、 firewallなどによるsecurity設定管理も可能となる。SEEDファイルは海半球データセンターを経由して利用者へ配付される。データ取得の準備ができると、ブラウザ経由または電子メールで利用者に通知される。
 海半球データセンターへは、ブラウザや電子メールを用いてネットワーク上どこからでもアクセス可能となっている。各データセンタのデータフォーマット等の差異は、観測網ごとのマシン(Java server)側で吸収され、 新しい観測網データが加わった場合には、他の観測網のマシン(Java server)を変更する必要はなく、海半球データセンターのマシン(Java client)側に新しい観測網データを扱うマシン(Java server)を認知させることで対応する。 このような分散処理により、単一マシンによるデータの編集/配付作業の負荷を低減することができる。また、Java clientを複数配置することで、利用者は最寄りのデータセンターへアクセスし、複数の観測網からのデータを簡便に取得できる。
 海半球ネットワーク地震観測網で新しくデータロガーを整備した観測点には、ダイアルアップ機能があり、約1ヵ月の連続データをロガー内のリングバッファに蓄えている。 海半球データセンターから、USGS発行の週間地震情報(Weekly QED)を基にした自動ダイアルアップ、手動によるダイアルアップを行うことが可能である。 新データロガー内の連続データから、世界中の地震(M>5.7、日本周辺は5.4)でトリガがかかったイベントデータが抽出され、地震発生から約10日後に海半球データセンターへ転送されて一般に公開される予定である。 これによって、これまで郵送によるデータ入手まで一ヵ月以上待っていた状況が改善される。
 海半球観測網の連続データ、イベントデータ、IRISにより編集されたイベントデータも、上記のデータと共に海半球ネットワークデータセンターのホームページ http://ohpdmc.eri.u-tokyo.ac.jp から取得可能である。