研究計画・方法
地球進化過程にマントル下降流の滞留が及ぼす影響のモデリング(小河)
 660km不連続面に於けるバリアー効果の強さはマントル進化に重大な影響を与えることを示唆する結果が従来得られてきたが、これまで数値シミュレーションにより、この問題を系統的にパラメータサーチした例はない。本研究では、複雑なマントル物質の挙動を考慮した2次元シミュレーションによって、この系統的なパラメータサーチを行う。具体的には、第一に、海嶺火山活動を止めて、マントル対流を純粋な熱対流としてモデル化し、この単純なモデルで、660km不連続面がプレート運動にどのような影響を与えるか、プレート運動は連続的に起こるかどうかを調べる。次に、海嶺火山活動の効果を取り入れて、プレート運動の起こり方が変わると、マントルの熱・化学的状態にどのような影響が出てくるかを調べる。
マントル下降流と周辺マントルとの熱、物質相互作用のモデリング(本多、岩森)
 三次元モデルによってスラブが斜めに沈み込んでいる場合(kinematic/dynamic)についての小規模対流の形成とそれに伴う熱輸送についての様子を調べる(本多)。また、最近明らかになりつつある下部マントルまでの岩石?水系の相平衡に基づき、マントル全体での水循環(沈み込むプレートにより水がマントルに持ち込まれ、海嶺などで還元される様子、上部・下部マントルでの水の分布予測)、ならびにその火成活動への影響を明らかにする。
3次元球殻熱対流シミュレーションによる熱輸送及び物質循環のモデリング(吉田、柳澤、浜野)
 410kmと660kmの深さに相当する相変化ならびに粘性率のコントラストをパラメータとしてスラブの挙動を調べ、スタグナントスラブのマントル下部への崩落の影響が、局所的なものに留まるのか、広範囲なマントル物質の混合を引き起こすのか、を明らかにする。地表およびコア境界での熱流量の変化の程度とその時空間スケールを見ることに重点をおき、スタグナントスラブの存在とマントル活動の間欠性との関連を明らかにする(柳澤、浜野)。また、マントル深部からの上昇流に注目し,時間経過(数億年規模)を追って観察する.マントル深部に由来する上昇流は,(i)マントル下降流の沈み込み、滞留、崩落に起因する受動的かつ大規模な補償流と,(ii)核・マントル境界の熱境界層から発生する能動的かつ局所的なプルーム,の二つが考えられる。それぞれの上昇流を時間発展する数値計算モデルの中で定量的に明確に分類する手法を開発し,地球表面に輸送される熱流量の推移を予測する(吉田)。
3次元不均質媒体中の電磁場伝播のシミュレーション(浜野)
 上記、(1)~(3)のシミュレーション結果の示す、温度、化学組成の分布に基づく電気伝導度不均質構造場中を伝わる電磁波(外部起原及びコア起原)のシミュレーションを行い、観測可能な表層での電磁場変動を計算し、対流下降域及びグローバルな不均質場中を伝わる電磁場により、実際の地球深部不均質構造、シミュレーション結果の適否を判断する。
3次元グローバルモデルによる地球進化過程のモデリング(全員)
 以上の個別モデルの解析から得られる、実際の地球深部の物性、熱輸送や物質循環をパラメター化して(3)のグローバルモデルに組み込み、時間と共に変動する地球進化過程を復元することにより、マントル下降流の振る舞いが地球の熱的・物質的進化過程に与えてきた影響を解明する。

Copyright 2004 ERI. All rights reserved.