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海洋底観測研究班(第2班)

(続き)


 12年度は、ODP191次航海により、 北西太平洋海盆において、海底孔を掘削し、海底掘削孔内広帯域地震観測システム(WP-2)の設置に成功した。観測システムのセンサーは2式の孔内型広帯域地震計Guralp社CMG-1TD(360〜0.02秒)であり、海底下460mの基盤である玄武岩中にセメントで固定した。地震計からの信号は、孔底において24ビット精度のデジタル信号に変換され、孔底から信号ケーブルにより、海底まで送られる。孔口には、公称24ワット出力の海水電池、システム制御装置、データ記録装置からなる海底部装置が置かれている。海底部装置は、それぞれを水中脱着コネクタで結合しており、適宜装置を最新のものに置き換えることによってバージョンアップ可能なシステム構成としている点が特長である。記録部は72GBのハードディスクを備え、100Hzサンプリングで1.6年の連続記録が可能である。1年に1回程度潜水艇によりデータ記録装置を入れ替えることによって、データの回収と観測の継続を実施する。掘削船での設置終了後の10月29日に、海洋科学技術センター無人潜水艇「かいこう」を用いて、システムの起動を行い、システムが正常に動作することを確認した(図2)。その後、システムのテストのためにリチウム電池(直径65cmのチタン球内に格納)で稼働させ、次の作業から本格的観測に入る予定である。海水電池は3〜5年程度発電する予定であるが、発電状況をみて、リチウム電池等の併用も考え、より長期の観測を計画している。

図2 海洋科学技術センター無人潜水艇「かいこう」により撮影された北西太平洋海盆WP-2孔内広帯域地震観測システム海底部全景。電池・レコーダユニット(円筒状)の下に掘削中に利用するリエントリコーンが見える。

 ROVによる起動実験を行った際に、約1時間分の孔内からの地震データが得られ、そのデータより孔内でのノイズスペクトルを求めた(図3)。電力節約のために、2つのセンサーの両方が正常であることを確認後、1つのセンサーの電源を切断した。電源断のセンサーについては数分のデータしか得られていないため、ノイズスペクトルは表示していない。また、収録中に地震計の1成分が調整作業中であったために、調整に必要な地震計内部の可動部からのノイズが混入していると考えられる。

図3 海底掘削孔内広帯域地震観測システムWP-2(Borehole)と海底設置型広帯域地震計NWPAC2(Seafloor)で得られたノイズスペクトル。どちらも水平動成分の記録を用いている。HNMおよびLNMは、陸上における地震観測点において、ノイズが大きな観測点ともっとも静かな観測点での平均的なノイズスペクトルを表す。 WP-2からの記録はシステム起動作業中に得られた2000年10月29日の42分間を、NWPAC2からの記録は2000年8月6日の1時間を用いた。孔内での地震観測は、海域でもっとも良好な記録が得られると考えられるが、海底面での観測においても、静かな場合は、孔内観測に匹敵する良質な記録が得られることがわかった。

 13年3月から4月にかけて、ODP195次航海により、西フィリピン海盆に海底孔を掘削し、孔内広帯域地震観測システム(WP-1)の設置に成功した。システム構成は、北西太平洋海盆のWP-2と同じであるが、電源にはリチウム電池を用いている。WP-1観測点については、13年11月に、無人潜水艇により、システムの起動を行う予定である。

2)海底設置型広帯域海底地震計での観測
 システム開発研究班(第3班)で開発した自己浮上式広帯域海底地震計(BBOBS)を平成11年8月に北西太平洋(WP-2孔内観測点近傍)に設置(NWPAC1)した。12年5月に海洋科学技術センターの「みらい」航海(MR00-K03)の間に無事回収し、引き続き新たなBBOBSの設置(NWPAC2)を行った。こちらの回収は12年11月にWP-2孔内観測点を起動する際(同センターの「かいれい」航海)に無事行われた。多少トラブルがあり欠測期間が生じたが、これらの2観測によりのべ約13ヶ月間の海底広帯域地震観測記録が得られた。
 BBOBSのセンサーには孔内計測用と同一なGuralp社製CMG-1T型(3成分速度型、帯域:360秒〜50Hz)を使用している。NWPAC2の観測期間で最も静穏な1時間分の加速度パワースペクトルを図3に孔内地震計のものと合わせて示した。海底面設置であるため、この観測点での水深(約5600m)であっても海面での擾乱に伴う海底面の傾斜変化や底層流の影響を受けてしまい、水平動成分の長周期側(100〜10秒)での雑音レベルは数10dBも変動することが分かっている。また、脈動が卓越する帯域(10〜1秒)については殆ど変化が見られず、常時高い雑音レベルである。このように観測が難しい面はあるが、長期間の観測を継続することで1ヶ月当たり数個の地震を明瞭に捉えることが出来ている。相対的に雑音レベルが低かったNWPAC2で捉えた地震記録例を図4に示す。

図4 北西太平洋に設置したBBOBS(NWPAC2)の記録例。観測期間中の地震を震央距離順に並べた上下動のレコードセクション。理論走時は平均的な地震の深さで計算されている。

 使用する船舶に特別な装備を必要とせず設置・回収が可能な、海底面設置型の自己浮上式BBOBSは、機動的に観測点を配置するには重要な測器である。平成13年度は水平動成分の雑音低減への改良を図ると共に、新たな配置での観測を2点で開始し、孔内観測点を加えた観測網を更に発展させる予定である。

3)PHS(フィリピン海)長期海底地震・電磁気アレー観測
 平成11年11月末に開始したこの観測の回収航海を12年7月に傭船により実施した。この観測全体を紹介する記事「フィリピン海横断測線での長期海底地震・電磁気機動観測」が本ニュースレターに掲載されているので、詳しくはそちらを参照されたい。

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