プチスポットは、三陸沖の北西太平洋の海底で発見された、ごく小規模な海底火山です。山体の直径は数km、比高は数百mで、単成火山と考えられています。海底地形図上に小さな点として分布する姿を形容してプチスポットと名付けられました。
これまでに知られている火山形成のメカニズムは以下の3つです。
プチスポット火山が発見された海域は、沈み込み帯や中央海嶺のいずれのプレート境界からも遠く離れています。また採取された岩石サンプルの研究から は、プチスポット火山を形成したマグマの起源は深さ100km程度であることが明らかにされていて、プチスポット形成のメカニズムは上記のいずれとも異な ると考えられます(Hirano et al., 2001; 2006)。
プチスポット火山の成因を明らかにするために、地球物理学的・地球化学的な様々な手法を用いた調査が計画・実行されています。海底電位磁力計を用いた上部マントル電気伝導度構造探査はその一環として行っています。
地震研究所とJAMSTECのグループでは、海底電位磁力計(OBEM) を用いた短期・長期の海底電磁場観測を行っています。左図は短期観測点の配置図です。若い玄武岩が採取されたプチスポット火山の近くに1点、それを取り囲 む4点にそれぞれ海底電位磁力計を展開して2005年5月から8月にかけて海底の電磁場変動を計測しました。
得られたデータをマグネトテルリック法に基づいて解析し、インバージョン法により上部マントルの電気伝導度構造を明らかにします。データ解析は鋭意進行中です。
岩石の電気伝導度は温度や部分溶融の有無、溶融帯のつながり具合、含水量などに敏感なので、マントルの電気伝導度分布を調べることで、どの深さ、どのくらいの広さの範囲で、プチスポットマグマが形成されているかについての示唆が得られると期待されます。