日本列島を含む太平洋西縁に沈み込む太平洋プレートは、まっすぐ下部マントルまで突き刺さらず、場所によってマントル遷移層付近で滞 留していると考えられていて、これを「スタグナントスラブ」と呼んでいます。この「スタグナントスラブ」をキーワードに、地球物理観測、超高圧地球化学、 計算機科学などの先端グループが結集し、マントルダイナミクス研究に新展開をもたらすことを目的とした、大規模な共同研究がスタグナントスラブ計画です。
参考: スタグナントスラブ計画ホームページス タグナントスラブ計画の一環として、我々はOBEMを用いた海底電磁気機動観測を行っています。OBEMデータと既存の海半球電磁気ネットワークによる観 測データとを統合して電磁気トモグラフィ解析を行い、日本およびフィリピン海を含む西太平洋域の巨大なスタグナントスラブを電気伝導度によって実体視する ことが目的です。
2005年の11月より1年間のOBEM観測を3回繰り返して実施しています。すでに、2年分のデータが取得されていて、現在最後の観測を行っている最中です。
左図は観測点配置です。T**のラベルがある+印がスタグナントスラブ計画で展開されたOBEM観測点です。左肩の緑の数字は計画が完了した際に何年分のデータが得られるかを示しています。
OBEM データが加わることで、スラブのイメージがより鮮明に描像できると期待されています。下図は実験に先立って行われたシミュレーション結果です。一番上の段 は、仮想的に与えた電気伝導度異常構造で、スタグナントスラブは底電気伝導度異常(青色)として表現されています。2段目は従来の海半球ネットワークデー タのみを使って解析した場合に、もとの構造(上段)がどれだけ復元できるか、3段目がOBEMデータが加わったときに、もとの構造がどれだけ復元できるか を示しています。OBEMデータが加わると400-500kmの深さで特にスラブがより鮮明に復元されることがわかります。